2012年4月11日水曜日

ファンカポナターイム!宇宙域マゴノシーン


ちょうど1週間海外出張に行って来たのですが、
初日にパソコンが壊れるという、想定外のトラブル。
ウインドウズが開かなくなってしまいましたよ。
電源だけは入ったので、iPodは問題なかったのが
不幸中の幸いですかね。

出張に行く前に、今回はプエンテのみと豪語した私ですが、
1週間経った本日の状況はといいますと、
完全にヒップホップというか、B-Boyの気分です、はい。

レゴブロック・スピーカーの音の悪さに辟易して、
今回の出張にあわせて購入したiPod用のスピーカー、
USBで電源が取れる上、iPodの充電も出来るということで、
3000円ぐらいだし、非常に使える逸品。
このスピーカー、ゴージャスな音は出ないものの、
破裂音が妙に強調されて、なかなか掘り出し物でした。


女性のGスポットはどこですか?
たとえばティト・プエンテだと、ティンバレスやコンガ、ボンゴといった
パーカッションの音が非常に良く聞き取れる。
アンサンブルの中でのリズムの流れが分かりやすくなる感じ。
少しチャチな音が逆に想像力を増す感じ。
モータウン全盛期、レコーディングの最終ミックスは
必ずトランジスタ・ラジオから出る音を想定して決めていた話を
思い出しましたよ。

そういえば、昔レコードコレクターズで戦前のSP盤を聞くには、
当時の再生装置で聞いたほうが音が良い、とか書いてたなとか
そんなことを考えながら、色々な音楽をかけて試したところ、
カウント・ベイシーとかアルセニオ・ロドリゲス、インプレッションズ、
テンプスの初期、戦前ブルースなんかは、予想通りかなりしっくり来る感じ。
逆に豊かな低音が気持ち良い70年代ファンクとかレゲエは物足りない。

で、ヒップホップも多分もう一つかな、と思ってたのですが、
これが意外にいけるのですね。
韻の踏み具合、喉の響かせ具合、リズムのノリといった、
MCのフロー、スキルといったようなものが
太鼓の音と一緒に強調されて聞こえてくる。
チャチな再生装置も良く考えてみたら、80年代のBボーイ御用達の
馬鹿でかいラジカセに近いものがあるのかも。


どのように胎児の動き

で、すっかり満足した私は、色々引っ張り出して聞いてみる。
コモン、ピート・ロック、ATCQ、ギャングスター、メインソース、KMD、
どれもかっこよい。
これまで気がつかなかった魅力に目覚めた感じですね。
なかでもマッドヴィレンとモス・デフの1st、いずれも世に名高い名盤ですが、
この2枚の凄まじさに改めて感心する私。

マッドリブ先生の酩酊して捩れるビートにフワフワと自在に乗るMFドゥーム、
阿吽の呼吸とでも言いましょうか、互いに引き立てあう。
こんなに相性がよいコンビはヒップホップの世界は勿論、
他の音楽でもあまり類を見ないのでは?
またこのコンビでの音を聞いてみたいものだ。
マッドリブの最高傑作であることは言うまでもない。

それにしても、ドゥームのユラユラ具合は本当に絶妙だ。
マッドリブの撚れる音に一番合う、というより、
撚れる音に合わせて更に撚れる幻惑的なライム。
シケで揺れる船の上で船酔いを避ける為に酒を飲むような感じ?
ちょっと違うかな?


彼らの目が開くとモルモットは寝るか
捻じれに捻じれをかけ合わせたら王道になりました的な
この作品を超えるアルバムを作りだすことが出来るMCは
今後なかなか出てこないんじゃないかな?
トラックメイカーは出てきそうだけどね。
サーラーと一回がっちり組んでアルバム作って欲しいものだ。

で、マッドヴィレンを超えるアルバムを作る可能性があるMCの筆頭は
間違いなくモス・デフだと思うし、みんなそう思っているのだろうけど、
現時点では1stアルバム『Black On Both Sides』が一番良いですね。
昨年の4枚目も結構良かったんだけど、全てにおいてバランスが取れた1stには
やっぱりまだ届かない感じ。

モス・デフ、まず、なんといっても声が素晴らしい。
声の質は全く違いますけど、70年代初頭のカーティスが持ってた
真摯さと温かさと力強さと知性を併せ持つ声。
ほぼソウルシンガーになっているコモン(それはそれで大好き)よりも
もっとストリート寄りで、くだけた街のアンチャン的な雰囲気もある。

どんな音にもスムーズに乗りこなす素晴らしいリズム感だが、
技巧的というかテクニックのひけらかしとは全く感じさせない。
むしろ寛いで、親近感を感じさせるのが、これまた凄いところ。
(そんなことはみんな知っているので、あえて言うまでも無いんだけど)


特に、この1stはもっと黎明期のヒップホップのような衝動感も持ち合わせていて、
それこそラジカセが似合う音で、こう、なんというか聴いててグッとくるのだ。
プレミア、Qティップ、盟友タリブ・クウェリとゲストも実に豪華で、
音もバリエーションに富んでいるけど、それでいて統一されている。

プリンス87年作のIt's gonna be a beautiful night の一節を使った曲、
「Rock'N'Roll」はロック(とラップ)は黒人が作ったものだ、と
主張してて、当時結構話題になったものですけど、
後年、映画「キャデラック・レコード」でチャック・ベリーを演じることを考えれば、
非常にブレない人であることが分かりますね。

DJプレミアとの曲は余分なものが何も無い徹頭徹尾クールな曲だし、
ロイ・エアーズのヴァイブが彩る曲でのルーズなクルーンもいい。
ほぼ全曲が名曲。アルバムのタイトル通り、真っ黒に黒光りしているのだけど、
光の当たり具合によって、輝き方が変わるというか、
実にまっとうな「ジャズ」でもあり、「ソウル」でもありますね。


人それぞれによって、また、聞く時期によってベストトラックは変わると思うけど、
今日現在の私のお気に入りはバスタ・ライムスがゲストに入った「Do it now」。
マックスウェルのエンブリアのような雰囲気のバックトラックで
タイプが異なるが、ブラックネス極まる二人が吠える。
聴く度に鼻血が出そうになるが、結局何度もリピートしてしまう。



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